物語は平成12年の公立高校が舞台。限られた手がかりで、今の生徒には忘れられてしまった33年前の出来事の真相に迫るお話。
同じ高校であっても時代により生徒たちの心持ちが全く違うのが印象的。かつて学生運動が盛んな時代があって、現代よりも自主的な意思表明が行われていたのだと改めて考えさせられる。平成、令和の学生たちは、強い自己主張をすることがあるだろうか。何かを変えてやるんだという熱い気持ちを持つだろうか。多様性が認められつつある社会で、エネルギーが集約されて大きな動きとなることはあるのだろうか。
対して、現代に生きる主人公はとても積極的とは言えない青年だが、作中ではそのことを決して否定しない。彼らは誰も傷つけてはいないのだから。